Tsuyoshi NAKATOMI / ナカトミツヨシ

Tsuyoshi NAKATOMI

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カメラを使わずに光を写す ― “aura” series -  by Tsuyoshi NAKATOMI

カメラを使わずに光を写す ― “aura” series

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“aura” series は、カメラを使わずに、光をフィルムに直接焼きつける手法によって、その瞬間にしか存在しない光の色や、空間に漂う気配を写す実験的なシリーズだ。

私たちが普段目にしている太陽の光は、一色のように見えるけれど、実際にはさまざまな色が混ざり合ってできている。その、光のもつさまざまな「色」を写すために、太陽光をプリズムを使って分解し、必要に応じて鏡などを使ってさらに反射や屈折を加えながら、その時々の太陽の色を抽出している。(これは、17世紀にアイザック・ニュートンが行った分光の実験をほぼそのままお借りした)

そうしてさまざまな色に分解された光を、暗室のような構造になっている手作りの箱に導く。奥にはインスタントフィルムが設置されており、そのフィルムに直接光が当たることで感光して、色が記録される仕組みになっている。撮影において一切のセンサーを介さず、感光のプロセスそのものを生のまま引き受ける構造にすることで、光そのものの色を写したいと思っている。

“aura” という名前には、目に見えない空気のような存在や、その場に一度だけ現れる感覚といった意味がこめられている。今日と同じ光は、二度と現れないかもしれない。このシリーズでは、そうした一度限りの光を、できるだけ手を加えずに受けとめることを大切にしている。

普段、あまりにも当たり前に接してしまっている「光」とまっすぐ向き合うことで、自分の中の見え方も少しずつ変わっていくような感覚がある。その揺らぎのようなものが、写すという行為の原点なのかもしれない。そしてきっとそれが、今の自分にとっての「見る」ということなのだと思う。

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